火災共済と安心生活|“さっぽろ市民共済 暮らしのブログ”

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  • 台風・地震は対象外⁉火災共済の盲点と「見舞金」という救済策
    「台風で屋根が飛ばされたらどうしよう…」「最近、地震が多いけど、うちは大丈夫だろうか?」「北海道の冬、大雪でカーポートが壊れたら…」暮らしの中で、ふと頭をよぎる自然災害への不安。そんな時、「うちは火災共済に入っているから安心!」と思っていませんか?実は、その考えには一つ、大きな落とし穴があるかもしれません。多くの方が意外に思われるのですが、火災共済の基本的な保障は、その名の通り「火災」や「落雷」、「破裂・爆発」などが中心で、地震や台風、大雪といった「自然災害」による損害は、原則として保障の対象外なのです。「え、じゃあ何のために…」と肩を落とすのは、まだ早いですよ。私たち札幌市民共済には、そんな“もしも”の時でも組合員の暮らしを支えたいという強い想いがあります。その想いを形にしたのが、この記事の主役である「自然災害見舞金」制度。これは、「相互扶助」という私たちの原点を体現した、心強い助け合いの仕組みなのです。この記事を読めば、火災共済と自然災害の本当の関係、そして私たちがどうやって万が一の際に支え合うのかが、きっとご理解いただけるはずです。さあ、一緒に“本当の安心”への扉を開けてみましょう。なぜ?火災共済が自然災害に「NO」という理由まず最初に、多くの方が抱くであろう「なぜ火災共済は自然災害を保障してくれないの?」という疑問にお答えします。これは決して、私たちが意地悪をしているわけではありません。そこには、共済という仕組みの根幹に関わる、大切な理由があるのです。そもそも「共済」とは?共済は、利益を目的とする保険会社とは少し異なり、「相互扶助」、つまり「一人は万人のために、万人は一人のために」という精神で成り立っています。 組合員がお金を出し合い、困った人がいれば、そのお金で助け合う。これが共済の基本的な考え方です。この「助け合い」の仕組みを、できるだけ安い掛金で、長く安定して続けていくためには、保障するリスクの範囲を明確にする必要があります。予測が難しく、被害が甚大すぎる「自然災害」火災や落雷は、いつどこで起こるか予測が難しく、被害も個別の家屋に限られることがほとんどです。しかし、地震や大規模な台風、豪雪といった自然災害は、一度発生すると非常に広い範囲で、同時に数えきれないほどの家屋に甚大な被害をもたらす可能性があります。もし、こうした巨大なリスクをすべて保障の対象に含めてしまうとどうなるでしょう?万が一の大災害に備えるためには、膨大な資金が必要となり、結果として組合員の皆さまからいただく掛金を、非常に高額に設定せざるを得なくなります。それでは、「市民の誰もが安い掛金で加入できる共済制度」という、私たちの原点が揺らいでしまいます。だからこそ、火災共済では、予測が困難で被害が広域化しやすい自然災害を、やむを得ず基本的な保障の対象外(免責事由)としているのです。 これは、「助け合い」の制度そのものを守り、未来へつないでいくための、苦渋の決断とも言えるのです。あきらめないで!「自然災害見舞金」という助け合いのカタチ「火災共済の理屈はわかった。でも、実際に自然災害で被害を受けたら、私たちは何も助けてもらえないの?」そんな声が聞こえてきそうです。ご安心ください。ここで登場するのが、私たち札幌市民共済が誇る独自の制度、「自然災害見舞金」です。「保障」ではなく「お見舞い」という発想この制度の最も大切なポイントは、これが契約に基づく「共済金」の支払いではない、ということです。では何かというと、組合員の皆さまで積み立てた「自然災害積立金」の中から、被災された方へ「お見舞い」としてお渡しするものなのです。まさに、困った仲間がいれば、みんなで少しずつお金を出し合って助ける「相互扶助」の精神そのものを形にした制度と言えるでしょう。どんな時に、いくらくらい支払われるの?この見舞金は、共済金の支払い対象とはならない自然災害、具体的には以下のような災害で損害を受けた場合にお支払いします。地震、噴火、またはこれらによる津波水災、風災、ひょう災、雪災支払われる金額は、被害の程度に応じて決まっています。区 分被害の程度一口あたりの見舞金支払限度額全 損建物または動産が70%以上損壊した場合など3,000円1災害につき建物と動産を合わせて10万円を限度半 損建物または動産が20%以上70%未満損壊した場合1,500円〃一部損損害額が20万円を超え、半損に該当しない場合300円〃床上浸水床上に浸水または土砂が流入した場合300円〃水濡れ損天井、壁、床、動産に水濡れが生じた場合100円損害額を限度例えば、1,000万円(100口)の建物契約で一部損(損害額20万円超)の被害に遭った場合、「300円 × 100口 = 30,000円」が見舞金として支払われる計算になります。知っておいてほしい大切な注意点この心強い見舞金制度ですが、万能ではありません。正しくご理解いただくために、いくつかの注意点があります。あくまで「見舞金」であり、修理費の全額を補償するものではありません。門や塀、垣根といった「付属工作物」のみの損害は対象外です。住宅の老朽化などが原因の「雨漏り」は対象となりません。新規契約または再契約から1年未満の場合、支払額が50%に減額されます。大規模な災害で積立金を超える被害が発生した場合は、支払額が減額される可能性があります。私たちは、良いことばかりをお伝えするのではなく、こうした制約もしっかりとご説明することで、組合員の皆さまとの信頼関係を築いていきたいと考えています。賢く備える!見舞金制度と合わせて考えたいプラスアルファの備え「自然災害見舞金」は、私たちの助け合いの精神を形にした素晴らしい制度です。しかし、被害の規模によっては、それだけでは生活再建が難しいケースも考えられます。そこで、プロの視点からご提案したいのが、この見舞金制度を“土台”として、さらに安心を上乗せする「賢い備え方」です。基本の備えとしての火災共済まずは、火災、落雷、水道管の凍結による破裂など、日々の暮らしに潜む突発的な事故にしっかりと備えることが大切です。そのための基本の備えが、私たちの火災共済です。ここは、家計に過度な負担をかけずに、しっかりと押さえておきましょう。プラスアルファの備え「補完火災保険」その上で、自然災害による大きな損害が心配な方には、当組合で取り扱っている「火災共済補完火災保険」への加入をおすすめします。これは、その名の通り、火災共済ではカバーしきれない部分を“補完”するための保険です。地震保険も付帯可能: 地震や台風など自然災害にも対応しています。割安な保険料: 組合員向けの集団扱となるため、一般で契約するより5%割安な保険料で加入できます。火災共済という「相互扶助の土台」の上に、この「補完保険」を組み合わせることで、手頃な掛金で幅広いリスクに、合理的かつ経済的に備えることが可能になるのです。まとめ今回は、火災共済と自然災害の少し複雑な関係、そして私たち札幌市民共済ならではの「自然災害見舞金」制度について、深掘りしてみました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。火災共済は、制度の安定を守るため、原則として地震や風水害などの自然災害は保障の対象外です。しかし、札幌市民共済には「相互扶助」の精神に基づき、組合員みんなで積み立てたお金からお支払いする独自の「自然災害見舞金」制度があります。見舞金は、あくまで“お見舞い”であり、損害のすべてをカバーするものではありません。より大きな安心を得るためには、「火災共済補完火災保険」などを組み合わせて、賢く備えることが重要です。何事もないのが一番です。しかし、予測不能な災害がいつ起こるとも限りません。制度を正しく理解し、ご自身のライフプランに合った備えをすること。それが、ご自身の暮らしを守るだけでなく、いざという時に誰かを助ける「相互扶助」の輪を、より強く、温かいものにしていくことに繋がります。私たちはこれからも、地域の皆さまの“もしも”に寄り添える、最も身近な存在であり続けたいと願っています。
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  • 気象警報・注意報、正しく知って命を守る新常識
    気象警報・注意報、正しく知って命を守る新常識皆さん、こんにちは!暮らしの安心をデザインする、防災ライターです。スマートフォンから「大雨警報が発表されました」という通知。テレビの画面に表示される「台風接近に伴う暴風警報」。私たちは日常的に「警報」や「注意報」という言葉を耳にします。しかし、その”本当の意味”を正しく理解し、適切な行動をとれているでしょうか?「警報が出たら避難すればいいんでしょ?」「注意報は、まあ大丈夫かな…」もし、あなたが少しでもそう思っているなら、この記事をぜひ最後まで読んでください。その認識、もしかしたら危険かもしれません。「警報が出てから」の行動では、手遅れになるケースもあるのです。今回は、気象警報・注意報を「自分事」として捉え、あなたと大切な人の命を守るための、一歩進んだ情報活用術をお伝えします。受け身の防災から、主体的な防災へ。今日から意識を変えていきましょう!「注意報だから大丈夫」は危険!警報・注意報の”本当の意味”とは?まず、基本中の基本ですが、「注意報」「警報」、そして最も危険度が高い「特別警報」の違いをおさらいしましょう。これは単なる危険度の順番ではありません。それぞれに、私たちが取るべき行動のヒントが隠されています。注意報(≒黄色信号):「災害が起こる”おそれ”」これは「これから天気が本格的に荒れますよ」という”予告編”です。「まだ大丈夫」と油断するのではなく、「この後、警報に切り替わるかもしれない」と考え、準備を始める段階です。例えば、家の周りの飛ばされそうな物を片付けたり、ハザードマップで避難場所を確認したり、備蓄品をチェックしたり。この段階での行動が、後の安心につながります。警報(≒赤信号):「”重大な”災害が起こる”おそれ”」危険が一段階上がりました。これは、避難行動を具体的に考え、必要であれば開始する段階です。特に、自治体が発表する「警戒レベル」と合わせて考えることが重要です。高齢の方や避難に時間がかかる方は「警戒レベル3」で避難を開始し、それ以外の方も「警戒レベル4」までには避難を完了するのが原則です。特別警報(≒非常事態の赤信号):「”かつてないほど”の危険が切迫」数十年に一度の、経験したことのないような災害が差し迫っている状況です。この警報が出た時点で、すでに避難所へ向かうことすら危険な場合があります。「ただちに命を守るための最善の行動」が求められます。屋外にいるのは極めて危険。無理に移動せず、家の中のより安全な場所(2階以上、崖から離れた部屋など)へ移る「垂直避難」なども選択肢になります。多くの人が陥りがちなのが、「自分だけは大丈夫」と思ってしまう「正常性バイアス(※)」という心の働きです。しかし、自然の力は私たちの想像をはるかに超えることがあります。「注意報」を軽視せず、”予告編”の段階から心のスイッチを入れること。それが、命を守る行動の第一歩なのです。(※注釈:正常性バイアス…自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人間の特性のこと。)あなたのスマホが最強の防災ツールに!情報の”受け取り方”改革今や、防災情報はテレビやラジオから”待つ”ものではなく、スマートフォンで能動的に”取りに行く”時代です。あなたのスマホを、最強の防災ツールに変身させましょう。① 「プッシュ通知」で情報をキャッチ!まずは、お住まいの地域の情報を自動で知らせてくれるアプリを入れましょう。「Yahoo!防災速報」や「NERV防災」といった無料アプリが有名です。また、多くの自治体が公式LINEアカウントで防災情報を発信しています。これらを登録しておけば、自分に関係のある警報や避難情報を、いち早く手に入れることができます。② 「キキクル」で”今いる場所”の危険度を知る!気象庁のウェブサイト「キキクル(危険度分布)」は、絶対にブックマークしておきたいツールです。これは、大雨による「土砂災害」「浸水害」「洪水害」の危険度が、地図上で色分けされて表示されるもの。自分の家や職場、学校など、ピンポイントの場所が今どれくらい危険なのかを、黄→赤→紫→黒という色の変化で直感的に把握できます。「大雨警報」という広い範囲の情報だけでなく、「自分の裏山が、今まさに危ない色(紫色)に変わってきている!」といった、よりパーソナルな危険を知ることができるのです。③ 「SNS」は”生の情報”と”デマ”を見極めるX(旧Twitter)などのSNSは、地域のリアルタイムな状況(「〇〇川が氾濫しそう」「〇〇道路が冠水した」など)を知るのに役立ちます。しかし、中には不正確な情報やデマも紛れ込んでいます。必ず「誰が」発信している情報か(公的機関や報道機関かなど)を確認し、複数の情報源と照らし合わせる冷静さを持ちましょう。大切なのは、「警報が出た」という結果だけを知るのではなく、「なぜ警報が出ているのか?」という背景(雨雲の動き、川の水位など)まで理解しようとすることです。情報を取りに行く姿勢が、あなたの判断をより確かなものにします。「避難」だけが答えじゃない。”その時”に取るべき最適行動の見つけ方「警報が出た!避難しなきゃ!」と、慌てて外に出ることが、かえって危険な場合もあります。取るべき行動は、あなたの置かれた状況によって変わります。その”最適解”を見つける鍵は、「ハザードマップ」と「地域のつながり」です。(挿絵:家族がリビングでハザードマップを広げているイラスト。「うちは川が近いから浸水のリスクがあるね」「土砂災害の心配はなさそうだから、警報が出たら慌てて外に出るより家の上階へ」「避難するならこの道が安全だね」と、具体的に話し合っている前向きな様子。)① まずは「ハザードマップ」で自宅のリスクを知る全ての行動の基本は、ハザードマップです。お住まいの自治体のホームページや、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」で、ご自宅にどんな災害リスクがあるのかを必ず確認してください。浸水想定区域(川の氾濫など)にあれば、早めに避難所などへ移動する「水平避難」が基本です。土砂災害警戒区域(がけ崩れなど)にあれば、危険が迫る前に安全な場所へ「水平避難」が必須です。もし、これらのリスクが低く、家が頑丈であれば、無理に外に出ず、2階以上の高い場所へ移動する「垂直避難」や、「在宅避難」も有効な選択肢となります。この事前知識があるかないかで、いざという時の判断のスピードと正確さが全く違ってきます。② 避難の合言葉は「ご近所さんと一緒に」災害時に最も頼りになるのは、遠くの親戚より近くの他人、つまり「ご近所さん」です。避難する際は、ぜひ一声かけてみてください。「警報が出ましたけど、大丈夫ですか?」「避難しようと思うんですけど、一緒に行きませんか?」この一言が、逃げ遅れを防ぎ、人の命を救うことがあります。特に、一人暮らしの高齢者や体の不自由な方への気配りは、「相互扶助」の精神そのものです。「警戒レベル3が出たら、向かいのおばあちゃんに声をかける」といった地域でのルール作りは、まち全体の防災力を高める素晴らしい「地域貢献」活動です。まとめ:天気予報を”自分事”のシナリオに変えよう気象警報・注意報は、空からの一方的な「お告げ」ではありません。それは、私たちが自らの命を守るための行動計画を立てるための、極めて重要な「判断材料」です。「警報が出たから動く」という”後手”の対応から、「注意報の段階で、警報になった場合のシナリオを考える」という”先手”の防災へ。そのために必要なのは、ハザードマップで、自宅のリスクをあらかじめ知っておくこと。キキクルなどで、迫りくる危険をリアルタイムに把握すること。そして、いざという時に助け合えるご近所さんとの絆を育んでおくこと。これらの「事前の備え」と「地域のつながり」があって初めて、気象情報は真にその力を発揮します。情報を正しく理解し、主体的に行動する。その一人ひとりの意識が、あなた自身と、あなたの愛する家族、そして地域社会全体を守る最大の力となるのです。さあ、まずは今日の夜、ご家族と一緒にハザードマップを開いてみることから始めてみませんか?
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  • 台風の「強さ」と「大きさ」の違いは?3分でわかるhPaの正体
    毎年やってくる台風の季節。テレビやインターネットのニュースで「今回の台風は“非常に強い”勢力で、しかも“大型”です」といった解説を耳にすると、なんだかとても大変なことが起こりそうだと身構えますよね。ですが、この「強さ」と「大きさ」、実は全く別のモノサシで測られていることをご存知でしたか?「強いってことは、大きいってことじゃないの?」と思われている方も少なくないかもしれません。この違いを正しく知ることが、迫りくる台風に対して適切な防災行動をとるための、とても大切な第一歩になります。さらに、台風のニュースで必ずと言っていいほど登場するナゾの単位、「hPa(ヘクトパスカル)」。数値が低いほどヤバい、とは聞くけれど、一体それが何を示しているのか、スッキリ説明できる人は意外と少ないものです。この記事を読めば、たった3分で台風情報の見方がガラリと変わり、あなたの防災意識が一段階アップデートされるはず。自分や家族の身を守ることはもちろん、地域で助け合う「相互扶助」の精神にもつながる大切な知識を、一緒に学んでいきましょう。見た目のサイズじゃない!台風の「大きさ」は“風速15m/sの範囲”で決まるまず、多くの人が勘違いしがちなのが、台風の「大きさ」です。天気図や衛星画像で見える、あの渦を巻いた雲の広がり全体が「大きさ」だと思っていませんか?実は違うんです。気象庁が定義する台風の「大きさ」は、「風速15m/s以上の風が吹いている範囲(強風域)の半径がどれくらいか」で決まります。風速15m/sというと、時速に換算すると54km。高速道路を走る車くらいのスピードです。この風が吹くと、看板が揺れ始めたり、傘がさしにくくなったりします。この「ちょっと強いな」と感じる風が吹いているエリアの広さで、台風のサイズを表しているのです。そして、その階級は驚くほどシンプル。たったの2種類しかありません。大型(大きい)台風:強風域の半径が500km以上 800km未満超大型(非常に大きい)台風:強風域の半径が800km以上これだけです。つまり、強風域の半径が499km以下の台風は、階級としては「並の大きさ」ということになります。「なんだ、大きいか、すごく大きいかの二択なんだ」と拍子抜けするかもしれませんが、これが重要なポイント。「大型」の台風ともなれば、その影響範囲は本州がすっぽり覆われてしまうほど広大です。これはつまり、「台風の中心がまだ遠く離れているから、自分のいる場所は大丈夫だろう」という油断が非常に危険だということを意味します。台風の中心が九州の南にあっても、「大型」であれば関東地方まで強風域に入り、交通機関の乱れや突風による被害が発生する可能性があるのです。広範囲に影響が及ぶからこそ、自分の住む地域だけでなく、周辺の状況にも気を配り、早め早めの備えや情報共有をすることが、「地域貢献」としての防災につながります。破壊力の指標!台風の「強さ」は“中心気圧と最大風速”がカギ次に、台風の「強さ」についてです。こちらは「大きさ」とは全く異なり、その台風が持つ「破壊力」のポテンシャルを示しています。「強さ」の基準となるのは、「中心付近の最大風速」です。こちらは3つの階級に分けられています。強い:最大風速が33m/s以上 44m/s未満非常に強い:最大風速が44m/s以上 54m/s未満猛烈な:最大風速が54m/s以上風速33m/s(時速約120km)を超えると、何かにつかまっていないと立っていられないほどの暴風です。「非常に強い」レベルになると、看板が落下・飛散し、電柱や街灯が倒れることも。走行中のトラックが横転するのもこのクラスです。そして「猛烈な」台風は、住家が倒壊・損壊するほどの、まさに災害級の破壊力を持っています。この恐ろしい暴風を生み出すエネルギー源こそが、天気予報で耳にする「hPa(ヘクトパスカル)」なのです。hPa(ヘクトパスカル)って何?「hPa」は、空気の重さ、つまり「気圧」を表す単位です。私たちは常に空気の重さに押されて生活していますが、それを感じることはありませんよね。だいたい地上の平均的な気圧が1013hPaくらい。これは、1平方メートルの広さに約10トンの重さがかかっているのと同じです。では、なぜ台風の中心気圧が低いと風が強くなるのでしょうか?ここで、台風を「巨大な掃除機」だとイメージしてみてください。掃除機は、内部の気圧をモーターで下げることで、周りの空気やゴミを勢いよく吸い込みますよね。台風もこれと全く同じ原理です。何らかの原因で発生した低気圧(台風の卵)は、周囲の空気よりも気圧が低いため、周りの空気をどんどん吸い込み始めます。そして、中心の気圧が低ければ低いほど(hPaの数値が小さいほど)、掃除機の吸引力が強くなるのと同じで、周りの空気を吸い込むパワーが強大になります。この「吸い込む力」こそが、暴風の正体なのです。ですから、天気予報で「中心気圧950hPa」などと聞いたら、「なるほど、地上の平均よりずっと気圧が低いから、猛烈な勢いで空気を吸い込んで、とてつもない暴風が吹き荒れるんだな」と理解することができます。hPaは、その台風が秘めた破壊力を知るための、重要なバロメーターなのです。「大きくて強い台風」だけが危険じゃない!組み合わせで変わる危険度「大きさ」と「強さ」の違いがわかると、台風がもたらす危険性をより立体的に捉えることができます。多くの人が「大きくて、しかも強い台風が一番ヤバい」と考えがちですが、必ずしもそうとは限りません。その組み合わせによって、危険の種類や対策が変わってくるのです。ケース1:小さくても「猛烈な」台風強風域が狭いため、影響範囲は限定的かもしれません。しかし、中心付近では「猛烈な」暴風が吹き荒れており、その進路上にある地域は局地的に甚大な被害を受ける可能性があります。接近に伴って急激に天候が悪化するため、「さっきまで晴れていたのに」という油断が命取りになりかねません。進路予測のわずかなズレで、被害が大きく変わるのも特徴です。ケース2:「大型」だけど強さは“並”の台風最大風速は「強い」の基準に達していないため、暴風への警戒は比較的低いかもしれません。しかし、「大型」であるため影響範囲が非常に広く、台風の動きが遅い場合は、長時間にわたって広範囲に雨を降らせ続けます。その結果、総雨量が記録的なものとなり、大規模な河川の氾濫や土砂災害など、風よりも水による災害のリスクが極めて高くなります。このように、台風の本当の恐ろしさは、「強さ × 大きさ × 進路 × スピード」といった、様々な要素の掛け算で決まります。だからこそ、天気予報を見る際には、「今回の台風は“非常に強い”らしい」という情報だけでなく、「大きさは“大型”だから、雨が長く続きそうだ」「進路が自分の住む街を直撃するかもしれない」といった複数の情報を組み合わせ、自分の地域にどのような危険が迫っているのかを具体的にイメージすることが重要です。その想像力こそが、早めの避難や備えにつながります。そして、「隣のお年寄り世帯は避難に時間がかかるかもしれない」「この地域の低い土地は浸水しやすいから注意を呼びかけよう」といった、地域全体で被害を最小限に抑える「相互扶助」の行動へと繋がっていくのです。まとめさて、今回は台風の「大きさ」と「強さ」という、似ているようで全く違う2つの指標について掘り下げてみました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。台風の「大きさ」 → 影響範囲の広さ(風速15m/s以上の強風域の半径)台風の「強さ」 → 破壊力のポテンシャル(中心付近の最大風速)hPa(ヘクトパスカル) → 低いほど風が強くなる、台風のエネルギー源これらの知識は、決して単なる豆知識ではありません。天気予報から流れてくる情報を正しく読み解き、迫りくる危険を“自分ごと”として捉えるための、いわば「防災リテラシー」です。情報を正しく理解できると、「風が強くなる前に家の周りを片付けよう」「長雨に備えて側溝の掃除をしておこう」「早めに避難した方が良さそうだ」といった、具体的で適切な行動に繋がります。そして、その知識をぜひ、ご家族やご友人、ご近所の方々と共有してみてください。一人の知識が二人、三人と伝わることで、地域全体の防災力は着実に向上します。それこそが、私たちが大切にしたい「相互扶助」の精神に基づいた、災害に強い社会づくりの第一歩です。台風シーズンを迎える前に、この機会にご自身の住む地域のハザードマップを確認したり、家族と避難場所や連絡方法について話し合ったりしてみてはいかがでしょうか。「知る」ことが、あなたと、あなたの大切な人のいのちを守る、最も確実な備えとなるのです。
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