
暮らしに安心を灯すための備え、「火災保険」と「火災共済」。マイホームの購入や新しい賃貸物件への引っ越しを機に、どちらにしようかと頭を悩ませた経験はありませんか?
「名前が似ているし、きっと中身も同じようなものでしょ?」
そう思っているなら、少しだけお待ちください。実はこの二つ、似ているようでいて、その生まれも育てられ方も、そして私たちとの関わり方も全く異なる、いわば「似て非なるもの」なのです。
選択を誤れば、いざという時に「こんなはずじゃなかった…」なんてことにもなりかねません。
こんにちは!札幌市民共済の火災共済を知り尽くした、プロブログライターです。今回は、あなたの暮らしと価値観に本当にフィットするのはどちらなのか、その核心に迫るべく、両者の違いを徹底的に解き明かしていきます。
この記事を読み終える頃には、きっとあなたにピッタリの「安心のカタチ」が見つかるはずですよ。
まず、最も本質的な違いからお話ししましょう。それは、「誰のために存在するのか」という根本的な哲学の違いです。
皆さんがよくご存じの「火災保険」は、民間の保険会社が提供する「商品」です。株式会社である保険会社は、株主のために利益を追求することが目的の一つ。ですから、保険契約は会社と顧客との間で行われる「商取引」と捉えることができます。
そのため、保険料は非常に細かくパーソナライズされています。建物の構造、築年数、所在地、家族構成など、あらゆるリスクをデータ化し、一人ひとりのリスクの高さに応じて保険料が算出されます。リスクが高いと判断されれば保険料は上がり、低ければ下がる。非常に合理的で、ビジネスライクな関係性と言えるでしょう。
一方、私たち札幌市民共済が提供する「火災共済」は、消費生活協同組合法に基づき設立された、営利を目的としない組合が運営しています。 私たちの目的は、利益を上げることではなく、組合員みんなの暮らしを守るための「相互扶助」、つまり「助け合い」です。
組合員は「お客様」ではなく、同じ目的を持つ「仲間」です。そのため、掛金はリスクの大小で大きく変動することはなく、地域に住む人なら誰でも公平に利用できるよう、シンプルで手頃な設定になっています。 そして、事業年度末に剰余金(利益のようなもの)が出た場合は、「割戻金」として組合員の皆さんに還元されることがあるのも、非営利の共済ならではの大きな特徴です。
つまり、火災保険を「ビジネス」と捉えるなら、火災共済は「コミュニティ」。この哲学の違いが、これからお話しする保障内容や掛金の仕組みに大きく影響してくるのです。これは単にどちらを選ぶかという話ではなく、あなたが「もしも」の時にどのような関係性に支えられたいか、という価値観の問いかけでもあるのです。
次に気になるのは、「どこまで保障してくれるのか?」という点でしょう。ここにも、それぞれの哲学が色濃く反映されています。
火災保険は、一般的に保障範囲が非常に広いのが特徴です。火災はもちろんのこと、台風による風災、洪水などの水災、大雪による雪災といった自然災害も基本保障に含まれていたり、特約(オプション)で幅広くカバーできたりします。
最近では、「家具を移動中に壁にぶつけて傷つけてしまった」といった日常生活でのうっかりミスによる「破損・汚損」まで保障するプランも登場しています。たくさんの特約を自由に組み合わせ、自分だけのオーダーメイドの保障を作れるのが魅力ですが、その分、保障を手厚くすればするほど保険料は高くなる傾向にあります。
札幌市民共済の火災共済は、必要な保障をシンプルにまとめたパッケージが基本です。保障の中心は「火災等」による損害。 この「火災等」には、以下のものが含まれます。
一方で、風水害や地震といった「自然災害」による損害は、基本の共済金支払いの対象外となります。 しかし、ここで終わらないのが「助け合い」を理念とする共済の真骨頂。札幌市民共済では、組合独自の「自然災害見舞金」制度を設けており、万が一、自然災害で被害に遭われた組合員の方には、お互い様の精神から見舞金をお支払いしています。 これは営利を目的としない共済だからこそできる、心強い仕組みなのです。
鋭い見方をすれば、火災保険は「万能ナイフ」、火災共済は「切れ味の良い専門包丁」と言えるかもしれません。何でもできるけれど重くて高価な道具を選ぶか、特定の目的に特化していて軽くて手頃な道具を選ぶか。あなたの暮らしで本当に起こりうるリスクは何なのかを冷静に見極めることが、賢い選択の第一歩です。
最後に、非常に重要でありながら見落とされがちな「支払われる金額」についてお話しします。ここにこそ、「知っている」と「知らない」で大きな差が生まれるポイントが隠されています。
まず、二つの言葉を覚えてください。
建物や家財の価値から、経年劣化による価値の減少分を差し引いた金額。つまり、現在の価値です。
被害に遭ったものと「同等のもの」を新たに建てたり、購入したりするために必要な金額です。
もし、あなたの契約が「時価額」基準だった場合、どうなるでしょうか。例えば、長年住んだ愛着のある我が家が全焼してしまったとします。受け取れる共済金(保険金)は時価額、つまり古くなった分の価値が差し引かれた金額になります。その金額で、果たして同じ家を建て直すことができるでしょうか?多くの場合、数百万円単位の自己負担が発生してしまうのが現実です。
この「いざという時に自己負担なく元の生活を取り戻せるように」という考え方こそが、「再取得価額」での保障です。
私たち札幌市民共済では、組合が定めた適正な「加入基準額」の70%以上の金額でご契約いただくと、自動的にこの「再取得価額特約」が付帯される仕組みになっています。 これは、「もしもの時に組合員が本当に困らないように」という、私たちの相互扶助の理念そのものです。
逆に、目先の掛金の安さだけを求めて、この基準額より著しく低い金額で契約してしまうと、「比例てん補」という考え方が適用され、損害額の一部しかお支払いできなくなってしまいます。
これは、単なるオプション選びではありません。基準額でしっかり加入するということは、自分自身の未来を守ると同時に、他の組合員の「もしも」を支えることにも繋がります。自分だけが得をしようとすると、共済という仕組みは本来の力を発揮できません。コミュニティ全体でリスクを公平に分ち合うからこそ、小さな掛金で大きな安心が生まれるのです。
さて、「火災共済」と「火災保険」の違い、お分かりいただけたでしょうか。最後に、あなたに合うのはどちらか、診断形式でまとめてみましょう。
どちらが良い、悪いという話ではありません。最も大切なのは、あなたの価値観、ライフスタイル、そして地域社会との関わり方に、どちらがしっくりくるか、ということです。
この記事が、単なる「火事への備え」を選ぶだけでなく、あなたの暮らしを支える「哲学」を見つめ直すきっかけとなれば、これほど嬉しいことはありません。
私たち札幌市民共済は、これからもこの街で暮らす皆さまにそっと寄り添い、共に支え合う「仲間」であり続けたいと心から願っています。